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André Chang , Ph.D.許されない台湾独立不支持の表明―北京における福田首相発言の問題点(上)translated by 台湾研究フォーラム会長 永山英樹2007-12-31 許されない台湾独立不支持の表明―北京における福田首相発言の問題点(上) 台湾研究フォーラム会長 永山英樹 ■誰も想像しなかった温首相のウソ発言 昨十二月二十八日に行われた福田首相と温家宝首相の共同記者会見で、温首相が福田首相の「台湾独立を支持しない」との立場を説明したところ、通訳は「独立反対を表明した」と「誤訳」した、と産経新聞(二十九日)は報じているが、じっさいにはそうではないようだ。 このとき温首相は「日本側が表明するところの『台湾独立に反対する』立場(を重視する)」と言い放っているのである。 日本政府は近年、「台湾独立」を警戒する中国に配慮し、「台湾独立を支持しない」との立場を表明している。これに対して中国側は、日本側がさらに一歩踏み込んで「台湾独立に反対する」と表明することを希望している。四月には来日した温首相もそれを安倍首相に強く要求したが、拒否されている。だから今回訪中した福田首相にも、同様の要求が行われるのではないかと注目されていたわけだが、温首相の予想外の事実歪曲発言に混乱したのか、そこで通訳は「誤訳」をする。 ただしそれは「台湾独立に反対しない立場」と言う誤訳だった。 もっとも、もしこれに産経が勘違いしたと言うのなら、それは仕方のないことだ。通訳が記者団に向い、日本の立場として「台湾独立に反対しない立場」と通訳すれば、「台湾独立を支持しない立場」を言い間違えたものと判断するのは当然だからだ。 温首相がまさかその場でウソを言い放つなど、記者団には想像も及ばないことだったろう。 ■捏造された政府見解―一人歩きする「台湾独立反対」 福田首相もそのように思ったようだ。産経によると同首相は、「その通訳の声に…凍り付いた。…『私からも日本の立場を申す』と切り出した。…『独立反対』と言う表現を『支持しない』に修正して見せた」と言うことだ。 本ブログで私は昨日、福田首相は温首相のウソ発言を訂正しないのを見て、「事前に了解」していたのではないかとの疑念を書いたが、じっさいには「修正して見せた」わけで、「事前了解あり」と言うのは杞憂だったことになる。 だが、これが修正と言えるだろうか。ことは日本政府が台湾を中国領土と認めているかどうかに関わる問題である。だから「私は『反対』とは言ってない」と言わなければならなかったのだ。まして相手は中国である。ここではっきりと釘を刺さなければ、この温首相のウソ発言は、事実を語ったものとして一人歩きすることになるのであろうことは、この国のこれまでの情報戦の手口を見れば明らかではないだろうか。 中国が日本に対し「台湾独立反対」の表明を求める狙いには、日本国内や国際社会に対する「一つの中国」の宣伝のほか、「日本までもが反対している」との情報を発信し、台湾の「祖国分裂分子」(台湾独立を希求する台湾人)の意志を挫くことがあるのは間違いない。それは温首相のこの発言の狙いも同様であろう。 すでに台湾のテレビ局は「温家宝は福田康夫の台湾独立に反対するとの言葉に賛意を表明した」(東森テレビ)と速報しているから、早速「戦果」を上げたわけだ。 そして「北京週報日本語版」(ネット版)も二十九日、温首相発言を「正確」に報じている。もちろんそこでは、「台湾独立に反対する日本側の立場表明を重視する」とはっきり書かれている。温首相直々の発言である以上、読む者は「そうなのか」と誤解せざるを得なくなるだろう。これが中国のやり方なのだ。 ■政府の「台湾独立不支持」は中国への媚びだ ところで、福田首相が表明した「台湾独立を支持しない」との政府の立場だが、そもそも「支持しない」と「反対する」のいったいどこが違うのか。この日、外務省の佐々江賢一郎アジア大洋州局長は「ニュアンスが異なる。強度に違いがあることは日本人には理解できるだろう」と説明しているが、強度が違うと言うだけで、これを聞いた日本人には、ともに「台湾独立はやめてほしい」「日本には迷惑なことだ」としか聞こえない。日本語だけでなく、英語で言っても、中国語で言っても、両者はやはり同義として受け取られるのだ。だからこそ中国側もこれまで、「支持しない」との日本側の誓約を受け入れてきたのである。 政府が「日中共同声明に基づいて台湾独立は支持しない」との立場表明を突然行うようになったのは九〇年代の橋本首相の時代からだ。そこで鈴木宗男衆議院議員が昨年、「共同声明のどこから『台湾独立を支持しない』の言葉が導き出されるのか」と政府に質問したところ、政府はそれにはっきりと答えられなかった。当然である。同声名にはそのようなことは一切書かれていない。 そもそも日本政府は七二年の同声明を発表するにあたり、中国の要求を拒否し、台湾を中国領土とする中国側の立場を承認しなかった。なぜなら日本が戦後のサンフランシスコ条約で台湾に関する主権を放棄した後、この島の新たな帰属先は決められなかったからだ。中国のものでもなければ、他のいかなる国のものでもない。そのような島を勝手に「中国領土と承認する」などとは「口が避けても言えない」(共同声明に署名した大平外相の言葉)からだ。 ところが近年では、あたかも台湾が中国領土であるかのごとく、「台湾独立を支持しない」と言い出しているわけだ。もちろんそれは前述の通り、中国への配慮であり、媚びである。 ■事大主義だから中国になめられる そこで私も鈴木議員に倣い、「それは中国に媚びるがための日中共同声明の捏造ではないか」と外務省中国課に問い合わせたところ、「いや、違う」と言われた。 それによると、同声明には「日本政府は…ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」とあり、そのポツダム宣言第八条には「『カイロ』宣言ノ条項ハ履行セラルベク」とあり、さらにそのカイロ宣言には「同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ…台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ、日本国ハ…(これらの)地域ヨリ駆逐セラルヘシ」とあるので、日本は台湾を中国に返還すべき立場につき、台湾独立は支持しないのだ、と言うことだった。 しかしこの「台湾返還」と言うものは行われることなく、日本は連合国の要求に従って、サンフランシスコ条約で台湾を放棄させられたのである。だから中国への「台湾返還」(割譲)は永久に不可能になったわけだが、外務省はなお「中国に返還すべきもの。だから台湾独立は支持しない」と言っているのだ。 このような馬鹿げた理屈がどうして通用するだろうか。いかに「台湾独立を支持しない」との立場を正当化するために編みだした論法とは言え、あまりにも愚かだ。そしてこの愚かさこそが事大主義の証なのだ。 そしてこの事大主義政府に中国は付け込んできている。「独立を支持しない」とまで言うようになったのだから、あとは「独立に反対する」と宣言させるだけである。 だが日本側はそれを拒否している。そこで温首相は日本の首相を目の前に、平然とウソ発言を行ったのではないだろうか。威厳を示しながらの、あのゆったりした発言が、失言などとは思えなかった。そして福田首相は「凍り付き」、慌てて「修正」の説明を行うはめになった。まさに政府による積年の事大主義的中国政策のつけであろう。 福田首相がそこで言うべきだったのは、「我が国の立場は、台湾は中国の一部ではないとするもの。中国からの台湾独立の問題は起こり得ない」であった。それを言って中国を怒らせたくないなら、台湾問題ではノーコメントを貫くべきだった。少なくとも「台湾独立を支持しない」など、中国を励まし、台湾を萎縮させるような発言だけは撤回するべきなのである。 ■福田首相の「台湾独立不支持」発言に抗議せよ! 『台湾の声』http://www.emaga.com/info/3407.html |