André Chang
, Ph.D.
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[AC論説]No. 230 国家意識の欠如はアメリカの戦略
2008-05-01
第二次大戦のあとのアジアは、台湾も日本もアメリカの政治圧力のもとに、
経済繁栄のみを許し、真の独立国家にさせない戦略である。
[AC通信:No.230] (2008/04/22)
[AC論説]No. 230 国家意識の欠如はアメリカの戦略
選挙に負けた民進党に対する人民の批判はかなり厳しい。しかし民進党
幹部は反省ではなく党内の派閥闘争に明け暮れている。選挙に負けた原
因はいくつもあるが、根本的な原因は人民と民進党の乖離、国家意識の
欠如である。この二つはコインの両面、つまり人民は独立願望があるの
に対し、民進党は和解共生を推進した。国家意識はアイマイとなり、選
挙は国民党を民進党の政党闘争になった。
台湾人は「大中華思想」に犯されて国の観念が混乱している。台湾人民
が中国から離脱したがっているのに「中華民国の枠内で、台湾人の政権
を作る」政策を主張したのが民進党だから、人民が唾棄するのは当然で
ある。民進党は台湾人の国家意識を混乱させた元凶である。
この責任の大半はアメリカのアジア戦略にある。つまり第二次大戦のあ
とのアジアは、台湾も日本もアメリカの政治圧力のもとに、経済繁栄の
みを許し、真の独立国家にさせない戦略である。この戦略は中国と北朝
鮮の進出によってアメリカは困惑している。
●選挙の敗因は国家意識の欠如
話を台湾に戻すと、2000年に民進党が政権を取って、台湾独立の気運が
上昇したため、アメリカは陳水扁に圧力をかけて「四不一没有」を受諾
させた。陳水扁は「中華民国は民主国家」であるという有名無実な主張
を維持する他に何も出来なかったのである。
いまのところ台湾独立の気運は「私は台湾人で、中国人ではない」と自
認する人が80%まで上昇した。だが台湾アイデンティティは国家意識と
分離されてしまい、民進党は中華民国の制度で国民党と和解共生する政
策を打ち出したため、国家意識が混乱し、「台湾国イコール中華民国」と
言う陳水扁の主張がおかしいと感じても、民進党は中華民国の制度で選
挙をやり、そして敗北した。
中華民国を守る、独立宣言はしない、国名変更をしないなどと「四不一
没有」の制限を強要したのはアメリカだった。アメリカの真意は「独立
はアメリカの同意のもとでやるべきだ、台湾は中華民国ではない、台湾
は中国の領土の一部ではない」ということである。この声明をだしたの
はアメリカ国務院の国家安全会議の東部アジア局主任のデニス・ワイル
ダーである。
ワイルダーの声明は陳水扁が「台湾名義で国連加盟を住民投票にかける」
と発表したときに声明したもので、台湾の国際的地位を「台湾はアメリ
カの暫定占領地区である」と明確にしたものである。アメリカが暫定占
領地区の権原を保有しているからアメリカのお墨付きがない国連加盟は
許さぬということだ。陳水扁は「アメリカに楯突いた」とされ、ダグラ
ス・パールが選挙に介入して国連加盟に反対を繰り返した。
アメリカが反対したため陳水扁の住民投票法案は36%の支持率に終わり、
総統選挙では謝長廷が42%の支持率で敗退した。アメリカがいまでも台
湾権原を握っていることを認識できなかった民進党の失敗である。
しかし究極統一を主張する馬英九が当選すると台湾と中国の接近が加速
してアメリカも困惑している。アメリカの暫定占領領土である台湾が中
国の経済侵略で中国に吸収・併呑される可能性が出てきたのである。
●「民主国家」の虚妄
デニス・ワイルダーが声明した、アメリカの台湾政策は以下の7点に要
約できる:(1)中華民国は存在しない。(2)台湾は国ではない。(3)
台湾は中国の領土ではない。(4)アメリカは曖昧政策を維持しているが、
権原を放棄したのではない。(5)台湾問題は海峡の両側が平和的に解決
すべきである。(6)中国の武力行使は断固として阻止する。(7)台湾
は民主国家であるべきだ。
つまりアメリカが台湾に対する権原を握っている、中国ではない、台湾
でもない、ということだ。陳水扁がアメリカの認可なしに国連加盟を住
民投票にかけることはアメリカの権原を犯すことになる。アメリカの認
可がなければ台湾問題は解決できない。
台湾関係法はアメリカの権原を守るものであって、「中華民国または台
湾」の安全を守るものではない。つまり台湾における政権はアメリカの傀
儡政権なのである。アメリカの許可がなければ台湾は独立しない。
陳水扁政権が台湾は民主国家であると主張するのは、民主主義を主張す
る限り、中国と台湾は統一できないと考える政治家が多いからだ。しか
しアメリカは台湾に民主制度があると認めても、独立国とは認めない。
アメリカが台湾を民主国家と認めるなら、「台湾の将来は台湾人民が決め
る」と宣言すべきである。しかしアメリカは台湾の権原を放棄していな
いから「台湾の将来は台湾海峡両側、つまり(アメリカが認めない中華
民国)と中国の話し合い、武力行使をしない状況で決めるべき」とアイ
マイな宣言をするのだ。
中国の領土でない台湾を、中国と話し合いで決めるというのは明らかに
不合理である。台湾が中国と話し合う必要はない。中華民国が存在しな
いなら台湾国と変えてもアメリカが反対する理由はない。アメリカが反
対しているのは台湾の法的権原が未だにアメリカの手中にある、アメリ
カの許可なしには出来ないといういことだ。
アメリカは62年も曖昧政策でもって、台湾人民に自決権を与えない状況
を維持し、台湾人民を中華民国の圧政下で苦しめてきたのである。自由
と民主を謳歌するアメリカは偽善であり、半世紀以上に渉る台湾人民の
人権無視は世界各国及び世界人権組織が糾弾すべきである。
●アメリカの日本戦略
戦後の日本は独立国家として復活した。しかし自国の防衛権は与えられ
なかった。自衛隊を作るのは賛成、自衛隊がアメリカの武器を買うのは
大賛成だが、武器を行使する権利は憲法で押さえて、国家の権力が半分
しかない状況である。日本の安全は日米安保条約でカバーしているが、
安保条約は日本が自衛権を持つこととは別である。それでも日本は憲法
改正が出来ない。学校で国家を歌うことも出来ないし、首相が靖国参拝
することも出来ない。四島返還、尖閣諸島、竹島問題でも自衛隊を使っ
て自国領土の防衛を行使できない。
つまりアメリカは日本が経済発展を遂げても、日本が自衛能力を持つこ
とに反対しているのだ。そして日本の外交部はいまでも「過去の戦争と
侵略の原罪」を背負い続けているのだ。自衛権がないから国連に多額な
献金をしても常任理事国になれないのである。
●台湾はアメリカの暫定占領地区である
しかし、アメリカの不合理や人権蹂躙を糾弾する前に、台湾がアメリカ
の暫定占領地区である事実は変っていないことを知るべきである。ワイ
ルダーの発言で、中華民国は存在しないし、台湾は国ではない、中国の
領土ではないという。つまりアメリカは暫定占領地区として保有してい
る台湾澎湖の権原を放棄していないのである。
日本が降伏文書に署名した1945年9月2日、マッカーサー連合国最高司
令官は、一般命令第一号を布告し、アジア各地に存在していた日本軍に
対して、降伏すべき相手を指定した。満州や北朝鮮38度線以北の日本軍
はソビエト極東軍最高司令官に;満州を除く支那、台湾、北緯16度以北
のフランス領インドシナの日本軍は蒋介石に;そして日本本土と北緯38
度以南の朝鮮、琉球諸島、フィリピン諸島の日本軍はアメリカ太平洋陸
軍部隊最高司令官に降伏することを命じられた。
ところが台湾澎湖を占領した蒋介石は、カイロ宣言とポツダム宣言を根
拠として台湾は中華民国の領土になったと宣言した。カイロ宣言もポツ
ダム宣言も占領した領土を自国領とする法的権原はない。1951年に締結
されたサンフランシスコ条約で日本は台湾澎湖に対する権原を放棄した
が、台湾澎湖の帰属は明記していない。つまりアメリカの暫定占領地区
であることは確実なのである。当時のアメリカは反共産主義で、スター
リンと毛沢東に反対だったから蒋介石の台湾占領を黙認し、台湾の法的
地位をアイマイにしただけである。
●アメリカ抜きで台湾独立はやれない
アメリカは日本、台湾を手放さない。台湾は国際法の解釈から見て既に
台湾国であるべきだが、アメリカがそれを許さないのである。アメリカ
の暫定領土で、中国の領土ではないから中国が台湾に対し武力行使は出
来ない。中国が台湾を併呑する法的根拠はないのである。
アメリカの許可なしに台湾が独立することは出来ない。陳水扁はアメリ
カに逆らって中華民国を台湾国に変えようとして失敗した。アメリカ抜
きで独立するのは無理である。
だが狡猾な中国の戦略はアメリカの法的根拠を覆す手段を持っている。
馬英九が当選してこれから推進する、経済と訪台の解禁により、台湾を
内部から中国化していくことである。アメリカが台湾の将来は平和的な
話し合いで決めると宣言しても、台湾内部に中国人が増えて、経済的に
中国依存が深まると台湾は「民主的に併呑」されてしまう。
●どうする台湾?
これまで独立運動を続けてきた諸氏は台湾独立を民衆運動と思い、台湾
アイデンティティの発揚に一生懸命になってきた。しかし40数年運動を
続けても人民は同調せず、民進党が中華民国から独立する可能性は民衆
の支持がないことも明らかになった。アメリカの後押しがなければ台湾
の独立はできない。
アメリカの暫定占領領土と言ってもアメリカ領に編入することではない。
国際法によればアメリカが占領地区を併合することは出来ないのである。
沖縄の帰属と同じく、アメリカが占領していた地区でも最終的に住民自
決で日本へ返還した。アメリカは沖縄独立を望んでいたが仕方がなかっ
た。同じように台湾の将来はアメリカが主張する中国と話し合いで決め
るのではなく、アメリカが「台湾の法的地位はアメリカが握っている」
と承認すれば住民自決が可能になるのである。
台湾人はアメリカと敵対してはならない、アメリカが過去の曖昧政策を
やめて、住民投票で台湾の独立を決めるように運動する。それを推進す
るには民進党に過去の路線を変更させ、独立運動の諸派が一体となって
アメリカに働きかけるべきである。台湾人の団結が先決なのである。
これまでの独立運動はバラバラで各派が勝手な主張を繰り返してきたた
め進歩が見られなかった。独立するためには団結してアメリカの説得か
ら始めるべきなのである。アメリカが曖昧政策を棄てて台湾人民の自決
権を容認すれば中国の圧力はなくなり、住民自決で独立が果たせる。
しかし国民党政権のもとで中国同化が進めば住民自決で独立を果たすこ
とは出来なくなる。ここ数年が大切であることをアメリカは知るべきで、
これをアメリカに説得するのがわれわれの任務である。