André Chang
, Ph.D.
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[AC論説]No. 228 台湾丸の座礁
2008-03-30
台湾丸は座礁したが沈没したのではない。台湾丸を沈没させてはならな
い。新しい進路を取り、心を合わせて独立に向けて努力すべきである。
[AC通信:No.228] (2008/03/28)
[AC論説]No. 228 台湾丸の座礁
台湾から帰ってきたところでこの記事を書いている。今回の選挙は謝長
廷が221万票の大差で負けて、いろいろな原因結果の討論がなされてい
る。敗北の原因にはいろいろあるが、いずれも半分当たっているし、半
分は当たっていない。
海外から応援に帰った人々の中には絶望的な言葉を吐いた人もいたと聞
くが、失望しても絶望してはならない。選挙が済んで最も大切なことは
敗北の討論より、国民党独裁に戻った事情をどのように分析し、台湾人
はこれからどのようにして中国の台湾併呑を防ぐことが出来るかを真剣
に討論しなければならないと思う。
もちろん、将来を考えるためには敗北の原因を探らねばならないが、負
けた原因をいろいろ書くよりも、これからどう改革を進めていくべきか
が重要である。この記事の前半では敗北の原因を探り、後半で将来の方
向を検討していきたい。
●中間路線の失敗
台湾の政情は四割が台湾派、四割が中国派で、二割はどちらでもない中
間派と言われている。別な見方をすれば各々三分の一で、1500万人の選
挙民のうち、各々が500万を占めている。ただし、中間派の一部は選挙
に投票しないから、500万票の台湾派と、500万票の統一派がいて、中間
派の500万票のうち、300万人は投票しなかった。謝長廷が負けた221
万票とは中間派のほとんどが馬英九に投票したという計算になる。
謝長廷は中間派を狙って「中間路線」の主張を続けてきたが、221万票
の敗北はつまり「中間路線が完敗」したといえる。私は去年から謝長廷
の「和解共生」や、「緑色と藍色の中間色である空色」を使った謝長廷の
選挙は負けると警告してきたが、謝長廷は投票前日まで和解共生を唱え
ていた。
中間路線では勝てない。このことは過去三年の選挙、つまり、二年前の
立法委員選挙、三合一と呼ばれる県市長と地方議員の選挙、それに今年
一月の立法委員選挙で民進党の取った中間路線が大敗したことが証明し
ている。それにも拘らず謝長廷は和解共生を唱えて選挙に臨んだのであ
った。台湾アイデンティティ路線に変更せよと進言した人はかなり多い
が、謝長廷は中間路線を変更することもなく最後まで和解共生を唱えて
いたのである。他にもいろいろ原因があるが、謝長廷は敗戦の総責任を
負うべきである。過去3回も中間路線で失敗して、なおも妥協を繰り返
すといった頭脳の持ち主は政治から引退すべきである。この結果を謝長
廷はどのようにして台湾人民に謝罪するのか。
選挙は一種の戦争である。戦いに和解とか、敵の旗色にソックリな色の
旗を掲げるのは、白旗を掲げて降参を申し込みながら戦いに臨むような
もので、闘志をかき立てることは出来ない。「和解共生」とか「逆転勝」
と言う日本語まがいのスローガンを掲げても中身がないから、民衆が謝
長廷の政見に賛成し支持する感情は生まれないのである。謝長廷は最後
まで和解共生も逆転勝もスローガンであって政策ではないことに気が付
かなかった。政策とは国を運営する方針のことであるが、和解共生にも
逆転勝にも国家運営の方針は見られない。
●陳水扁憎悪と民進党不支持
今回の選挙の前後において民間の声は陳水扁に対する憎悪に満ちた批判
だった。曰く:陳水扁は汚職をした、妻が株で儲けた、婿と婿の家族が
総統の親戚であることを利用して収賄や汚職をした、などである。これ
らの批判は一部当っているかもしれないが、大部分はメディアがデッチ
上げた歪曲報道であると思われる。民衆はメディアの歪曲宣伝に惑わさ
れやすいのである。
しかし、陳水扁はメディアをコントロール出来なかったばかりか「メデ
ィアの報道自由を保護する」と称して人民の失望を買った。陳水扁はメ
ディアの批判やデッチ上げに一切反論しなかった。暗殺未遂に会い、自
作自演の冤罪を着せられ、家族や親戚がデッチ上げ報道で逮捕されても、
施明徳が[紅衛兵]運動で陳水扁の辞職を要求しても沈黙を続けたので
あった。陳水扁の軟弱・無為で少なくとも50万票を失った。
陳水扁だけでなく民進党そのものが失策に失策を重ねた挙句が選挙の敗
北に繋がっている。陳水扁・民進党が失敗した原因は利権の争奪だけで
はなく、政策上の失敗が重なったことである。いくつか例を挙げれば:
(1)選挙法の改正で小選挙区・二票制度を導入したことで小政党を潰
し、国民党と二大政党政治を企画したこと。結果は台聯党を潰しただけ
でなく民進党も潰された。
(2)憲法改正で公民投票が通過できない過半数の法制をつくった。
(3)国民党の宣伝、メディアの歪曲などに反論しなかったため民衆の
疑惑が大きくなった。
(4)経済、行政などで台湾がこの8年来進歩、成功した事実を国民に
示すことが出来なかった。
(5)台湾アイデンティティの高揚に失敗したため、国家意識があいま
いとなり、中国意識、統一論、現状維持などが過大宣伝された。
(6)公民投票を巡って米国との関係が悪化し、アメリカが選挙に圧力
をあたえた。
●メディアの洗脳と台湾人の無定見さ
国民党が掲げた経済問題は実情とは大いに違う。台湾の経済は悪化して
いないが、地域差が拡大したことにある。台北を中心とする北部では経
済が繁栄し、南部では凋落した。農民政策に失敗したが工業は発展した。
大企業は成功し中小企業は失敗したが、これらの主な原因は中国に投資
したため国内資本の空洞化が進んだことである。
事実を歪曲報道したメディアを是正できなかったのは民進党の失策であ
るが、メディアを信じた台湾人の無定見さ、愛国心の欠如も失敗の原因
となっている。台湾では国の存在、中国と台湾の違いがあいまいである。
これに加えて民進党の推進した民主選挙とは中華民国を維持することで、
このため人民は選挙を賭博のように軽々しく扱ったのである。
台湾の選挙は国民党と民進党の戦いではなくて、「国の存亡」を賭けた戦
いである。しかし民進党の政策が中華民国の存在を重視しているので選
挙は只のバクチ遊びとなってしまったのだ。
●アメリカの責任
選挙に大きな影響を与えたのはアメリカの圧力である。陳水扁が「台湾
名義で国連加盟」を公民投票にかけたため、国民党は慌てて「中華民国
名義で国連復帰」を掲げて陳水扁安とは違う公民投票法案を出した。こ
の二つにアメリカは反対で、ダグラス・パールが大きな圧力をかけた。
結果として両法案とも36%内外の支持率で通過しなかった。
アメリカが台湾の公民投票にあからさまな干渉をしたのは、台湾が未だ
にアメリカの暫定占領領土だから、如何なる名義で国連に加盟してもア
メリカの権原を否定することになるわけである。詳細は今回の記事のあ
とで稿を改めて検討したい。しかしアメリカの干渉が総統選挙にも影響
を与え、謝長廷に不利となったことは否定できない。アメリカの干渉が
台湾の将来についてアメリカに不利な状況を作り上げたが、その責任は
アメリカが負うべきである。
●座礁した台湾丸の行方
原因結果の討論はこれぐらいにして、台湾はこれからどうすればよいの
か検討してみよう。
今回の選挙は台湾人の敗北である。国民党独裁に戻った台湾は、これか
ら中国の侵略を早める結果となる。馬英九は当選直後にさっそく「民間
航空の解放」、「中国人の訪問を解放」、「経済合作」などを掲げたが、こ
れらは非常に危険なことである。
相手は13億の人口を持ち、金が余っている状況で、中国人と中国の金が
台湾に押し寄せてくれば、数年を待たずして中国人の人口が台湾人を上
回り、チベットと同じ状況になる。経済的にも強引に台湾企業を株買占
め独占してしまうことが出来る。中国の人海戦術、金銭戦術を防ぐ方法
は皆無といってよい。中国の台湾併呑は武力でなく、人口と経済の併呑
であると私は信じている。
台湾丸は座礁したが、船長の陳水扁を始め、候補者の謝長廷、民進党の
連中が無能で、人民が国家存亡の危機意識を持たなかった事実がこのよ
うな結果を齎したのである。しかし私はこの失敗に失望したが絶望的で
はないと思っている。
台湾が「中華民国の制度から脱皮して正名制憲を果たす」希望はなくな
った。しかしわれわれは中華民国という、既に滅亡した国の名前にしが
みついている必要はない。
アメリカはすでに(1)台湾は中国の領土ではない、(2)中華民国は存
在しない、(3)台湾独立には反対、(4)台湾の国際的地位は未定であ
る、と宣言した。つまり台湾はアメリカの暫定占領地区なのである。ア
メリカが台湾を「暫定占領地区」としている限り、台湾が中国を懸念せ
ず、暫定領土から独立を果たす可能性が増大したことに目を向けるべき
である。沖縄の帰属は沖縄人民の公民投票によって決着がついたのであ
る。沖縄と同じく台湾の帰属は台湾人民が決める、この住民自決の権利
をアメリカや中国が否定することは出来ない。
要注意なのは馬英九の独裁政権によって中国化が進み、住民投票に大き
な影響を与える可能性があることで、これは慢性的な中国化政策である。
この様な事態を招いた責任はアメリカの曖昧政策、現状維持といった無
定見さにあるといってよい。
●民進党を解体して台湾新党を成立させる
選挙で大敗したあと民進党内部では反省と指導者争いが起きているが、
私は民進党の指導者層は総辞職すべきだと思う。八年間も政権を握って
いながら利権争いに明け暮れ、国民党を倒せず逆転勝利を与えた愚劣さ
は指導者層にある。民進党が今後どのように改革を進めても人民の支持
は得られない。
台湾には500万人の台湾意識の強固な層があるが、彼らの台湾意識をど
のように運営していくかについて、明確な指導者がいないのが実情であ
る。政見にもいろいろな違いがあって、独立連盟、民進党、台聯党の他
にも建国党、愛国党など、いずれも台湾意識が強い人々が揃っている。
しかし彼らの意識を統一させて、「台湾の独立」という共同の目標に向け
て合作、努力することが未だに出来ていない。民進党もその他の政党も
みんな解体して新政党を作るべき時が来たと思う。
●新しい進路に向けて
「中華民国から脱皮して正名制憲を果たす」ことは失敗した。これは挫
折であるが、同時に新しい希望が出てきたこと、「アメリカの暫定占領か
ら住民投票で独立を果たす」ことである。選挙に大敗して国民党独裁と
なり、中国の影響下から台湾独立を果たすことは更に困難になったが、
「アメリカの占領地区、アメリカの監視の下で、アメリカの力を借りて
独立を果たす」ことを真剣に検討する日がきたのである。
これまで台湾独立についていろいろな意見、批判や足の引っ張り合いが
行われてきたが、それぞれが小異を棄てて大局を見るべきである。これ
が今後われわれの進むべき道とは:
(1)アメリカに台湾が暫定占領領土であることを認めさせる
(2)アメリカの曖昧政策をやめさせる
(3)台湾は中国の領土ではないことを国際的に認知させ、中国の圧
力を排除する
(4)アメリカ及び世界各国の監視の下に公民投票を行う。
われわれは如何にしてこの目標を達成するか、皆で研究し努力していく
べきだとおもう。
台湾丸は座礁したが沈没したのではない。台湾丸を沈没させてはならな
い。新しい進路を取り、心を合わせて独立に向けて努力すべきである。