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André Chang , Ph.D.

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李登輝前総統会見記(2)

translated by 山本善心の週刊「木曜コラム」<第171号>2008.02.28
2008-02-28

時局心話會のホームページ http://www.fides.dti.ne.jp/~shinwa/
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      山本善心の週刊「木曜コラム」<第171号>2008.02.28
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                         時局心話會代表 山本善心

(171)今週のテーマ
李登輝前総統会見記(2)

 先週号に続いて、李登輝前総統の講演に続く質疑応答の模様を下記に
要約する。

質問「中国の台湾侵攻の可能性はあるのか」
-今後西太平洋において、恐らくアメリカと中国のシーレーンをめぐる争い
が起こるだろう。かつて地政学上の視点から「沈まない航空母艦」と呼ばれ
た台湾だが、今大事なのは航空母艦などではなく、武器と戦略である。一
方武器という点において、ミサイルやロケットのような電子産業ではむしろ
日本が優勢なので、日中間に戦争が起きることはまずないと考えられる。
台湾問題についても同様だ。

-中国はアメリカの原子力潜水艦やミサイルの能力などを恐れており、対
米関係にはひどく気を遣っている。国際関係においては「戦わずして勝つ」
が重要であり、日本も自分の持つ経済力や技術力をもっと発揮すべきでは
ないか。

質問「政治が弱くリーダーシップある指導者もいない日本が、力を発揮する
にはどうしたらよいか」
-軍国主義に戻るのではなく、民主主義の制度内で力を集めるべきだ。今
のような政党政治の権力争いにとらわれずに、政治家は未来の日本のあり
方についてのメッセージを国民に発信してほしい。

質問「経済が強いと言っても、日本は多額の借金を抱えている。企業も多額
の税金を徴収されることを諦めざるを得ない状態だ。これらの難関を打開す
るにはどうしたらよいか」
-税金を下げることだ。台湾では企業から営業税や営業所得税を取ってい
たが、私は総統時代にこの2つを統合、税率を27%から17%まで引き下げ
た。その結果税収がアップしたのだ。税率が高すぎると国内に金が貯まら
ない。贈与税も45%から10%にまで下げ、浮いた35ポイントを国のために
振り向けるようにした。経済学的なマーケットメカニズムでは金持ちにしか
金が行かないから、富を公平に分配するには政府が手を入れなければな
らない。

質問「日本の官僚や政治家はアメリカという壁に阻まれている。その現状を
打破するために、李閣下のような外部からもっとメッセージを発信していた
だきたい」
-いずれ中国とアメリカが覇権争いになったとき、アメリカは日本を頼らざ
るを得ない状況にある。しかし先の戦争以来、アメリカは日本に圧力をかけ
るのが癖になっている。

-アメリカ人は実際的な反面、哲学に欠けるところがある。日本人は技術の
他にも自然との調和力など優れた精神性・世界観を持っているのだから、こ
うした素晴らしい面をもっと自覚して、アメリカの壁を打ち破るべきだ。まず憲
法、教育基本法を見直して、日本文化の伝統的な良さを取り戻す必要があ
る。

質問「これからは台湾、日本、韓国の3国がしっかり手を携えて、中国と共存
していかなければならないのではないか」
-台湾の安全は日本に握られていると言っても過言ではない。中国も変わ
ってきつつあるが、旧態依然としたところがまだ残っている。アジアの価値を
下げる皇帝型・帝国的な中国のやり方は改めるべきだ。

質問「本日のようなお話を日本の学生にも聞かせたい。大学関係者なので
ぜひ李前総統をお招きしたいが、いかがだろうか」
-日本の若い人たちに、精神的な道徳や伝統・文化の重みを国が伝えて
いない。日本人が目先の利害にばかりとらわれていれば、真の進歩などあ
り得ないだろう。日本人特有の精神とは「大和魂」であり「武士道」であると
思う。それは日本人の行動基準であり、生きるための哲学だ。機会があれ
ば、いつでも日本で講演させてほしい。

質問「最近出回った『台湾の民主化の道』というDVDによると、『李登輝は
一体何者だ』『コロコロ考えが変わる』との批判が一部にあるようだが」
-台湾大学史学科の呉密察教授は、『李登輝氏は大正世代に生まれて徹
底的に日本の薫陶を受け、忍耐・自制・秩序を重んじ、公のために奮闘・努
力する精神を身につけた人である』と言っている。この考えに私は同意する
が、実践躬行(じっせんきゅうこう、自分で実際に行動すること)が述べられ
ていない。日本的教育は、武士道の実践に意義があるからだ。

-時代は大きく変化している。人間の考えや行動は、時代の変化に適応す
ることが肝要だ。世界がどんどん変わっているのに、政治や経済が変わら
ないなら国が衰退するだけだ。しかし国の精神や伝統・文化、企業の理念・
哲学は未来永劫変わってはならない。

質問「一国の指導者であった李前総統から、指導者の条件について聞かせ
ていただきたい」
-指導者であるのは容易なことではない。団体の大小を問わず、基本的に
考えの違う人々を従え、同じ目標に向かって前進するわけだから、大変な
挑戦といえるだろう。ピーター・ドラッカーは「知識のある人ほど管理しにくい。
しかし知識のある人を使うことは目標を達成する最良の方法だ」と言っている。

-指導者は専門家と違い、側に立ってしっかり努めればよいというのではな
い。いつでも最前線に立って、随時判断し、決断し、実行しなければならない。

-日本の企業の社長・会長は「トップは物事を“現場”で処理しろ」と言って
いるが、企業がバブル崩壊後の業績悪化から立ち直ったのは、経営者が現
場を重視したからではないか。

 李前総統は1時間近く時間を延長して、熱く語られた。

謝長廷総統候補の質疑応答

 2月16日、弊会訪台団一行は民進党の謝長廷総統候補の選挙事務所を
訪問する。謝候補は日焼けした顔でにこやかに我々を迎えてくれた。まず筆
者は訪台団団長として以下の通り挨拶。

山本挨拶「謝候補は『台中関係の共生と和解』を対中政策にしていると聞い
ている。台湾は『台中関係』を対等なものと考え、極端な中国依存経済から
脱却し、海洋国家台湾に立脚してアジア諸国とバランスのとれたグローバ
ル戦略を確立してもらいたい。その上で日台は、中国の民主化が促進され
るよう、共生と和解を貫徹すべきだと思う」

 謝候補からもご挨拶と質疑への回答をいただいた。謝候補はまず、自分
が京都大学出身の親日派であることに触れ、こう述べた。

謝挨拶「日本に長い間滞在したので日本人を理解しているし、日本が大好
きだ。日本と台湾の間には深い歴史関係があり、民間も互いに好感情を持
っている。我々は今後もこの関係を大切にしていきたい」

「台湾は独立国家であり、そもそもそうでなければ総統選挙などあるはずが
ない。国民党は中国との統一を主張しているが、50%の住民が独立を望ん
でいる。国民の意見を尊重し、独立国家としての主体性、愛国心を養う教育
は、急を要する問題だ」

質問「国民党の馬候補は人気が高く当選確実だと聞いているが、実際はど
うか」
-98年に高雄市長選に出たが、選挙一週間前の世論調査では、自分の
支持率は15%であった。それでも勝てたのだから、台湾では投票結果が
一番正確な世論調査なのだ。

質問「謝候補が勝てた場合、日本とどのような関係を築こうと考えているか」
-台湾と日本の関係は、政治的・文化的にも非常に親密だ。特に日本の助
力がほしいのはFTA(自由貿易協定)への経済協力である。またASEAN+
3(日本・中国・韓国)に台湾が加入できるように協力してほしい。日本の技
術と台湾の管理能力を結合させていきたい。

質問「台中経済関係は過熱気味ではないか」
-馬候補が主張する「両岸共同市場」は危険だ。中国の資金、商品、労働
力を台湾に進出させる自由港を作ろうと考えている。国民党が経済に焦点
を絞っている理由はそこにあるのだ。台湾は主体性と開放性を持ちながら、
国家として安全保障問題も考慮するのが最高指導者の責任ではないか。
台湾は中国と最大の経済関係を維持するが、同時に台湾の主体性と開放
性をコントロールすべきである。

中国の本音は謝長廷候補

 筆者は中国側の要人と太いパイプを持つ方々と交流がある。中国政府首
脳や中南海の権力者たちの一部は、口で「中台統一」と言うが、本音は現
状維持だ。つまり米中台には、台湾で紛争を起こしてもらいたくないという共
通の認識がある。その意味で米中が最も嫌ったのが、陳水扁総統の独立
問題であった。一方、馬候補の民族主義的な発想や行動にも警戒感があ
る。それゆえ謝候補の「中台共生と和解」は米中を安心させるものである。
筆者は中国側の本音を謝候補に伝えた。
次回は3月6日(木)
※訪台の写真集は弊会HPを御覧下さい。